グローバルキャリア講座

“ボランティア”がつなぐもの

May 8, 2015

第3回のグローバルキャリア講座は、3、4時間目の自由研究の時間に、ワールドスタディーズとグローバルスタディーズの授業の中で行われました。

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今回のテーマは「人権」と「国際協力」です。NPO団体「It’s Not Just Mud」ディレクターのダミアン・ケイトさんに、東日本大震災の復興支援活動の経験をもとに、ボランティアとは何か、その活動がもたらすものについてお話をお聞きしました。

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ダミアンさんははじめに、年齢も国籍も経歴も違うさまざまな人たちの写真を見せながら、「みんな自主的に集まってきた人々です」と紹介。そして、生徒たちにボランティアの経験を尋ね、「どんなことでもいい、たとえば隣の家の木の枝の手入れをすることだってボランティア」と、ベースの考えを伝えました。

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そして自己紹介。ダミアンさんが育ったオーストラリアの町では、山火事があれば住民全員で消火活動をするような助け合いが日常だったそうです。

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後年、水中カメラマンとして滞在したフィリピンで、オランダ政府によるドキュメンタリーフィルムの撮影に携わり、人々が助け合う暮らしを経験し、それが、「自分にとても合っている」と感じたとダミアンさん。なにか報酬をもらえるわけではないが、自分自身の満足感がなによりも魅力だったと話されました。

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「育った町は超イナカ!」「スーツは嫌い」といった率直でユーモラスな語り、フランクな人柄やライフスタイルは、ダミアンさんの豊かな人間味となって、語られるエピソードの数々にみんな惹きこまれるように聞いていました。

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そして、宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』の英訳詩を、他者を思いやる心、ボランティアの精神に通じるものとして紹介。ここから東日本大震災とそこでの活動を語っていきます。

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「あの時、みなさんはどこに居ましたか?」という問いから、当時のことをそれぞれが話すことで全員の共通意識がぐっと高まりました。

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ダミアンさんから聞く、石巻を中心にした活動の様子、日本国内や世界中から集まってきた人々との出会い、より有意義なボランティア活動のために呼びかけ、成長してきた団体の成り立ち、団体名「It’s Not Just Mud」に込めた想い、参加した人にもたらされた変化などの話は、どれも、“自発的な行動”の力強さを感じるものばかりでした。

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休み時間をはさんで4時間目は、被災地・石巻の様子と人々の証言を綴ったドキュメンタリー映像からはじまりました。生々しい光景と言葉に目が離せない様子でじっと見入る生徒たち。事実の迫力が教室を満たしていました。

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続いては、生徒たちのディスカッション。英語のポール先生の進行で、4、5人のグループになって、ダミアンさんの講義と映像から感じたことを話し合い、意見を発表していきました。

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ディスカッションのテーマは、「What is a volunteer?‐Why ‐How ‐Where」。
あらためてボランティアについて話し合うことをとおして、自分自身の関心事や考え方に気づいていく時間になりました。

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各グループの意見を発表した後、「では、この授業のはじめと今でボランティアに対する考え方が変わった人は?」という問いに、大半の生徒が手を挙げていました。

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最後はダミアンさんからのメッセージ。
「今日みなさんが出した答えは全て正しいものです。これからも互いに助け合う気持ち、ボランティアの心を大切にしてください」との言葉に、全員拍手で感謝を伝えました。

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ボランティアへの理解とともに、海外に目が向けられがちな“国際協力”は、“日本国内”でもこのように行われていることを、外国人の視点をとおして感じる興味深い授業になりました。

Lecturer Profile
ダミアン・ケイト
Damian Keyte
NPO団体「It's Not Just Mud」ディレクター。オーストラリア出身。オーストラリア、フィリピンで水中カメラマンとして活躍し、ボランティアにも関わる。日本での就業経験を経て石油採掘会社に勤務する傍ら、宮城県石巻市を拠点に復興支援を行う外国人によるボランティア団体の創設と運営に携わる。