ヨーロピアン・スタディーズ

現地体験で得た“実感”から学ぶこと

January 4, 2019

グローバルに活躍する全人的リーダーの資質を養う目的のもと、ヨーロッパ各地を訪問して現地の文化・諸問題に直接触れる海外研修プログラム「ヨーロピアン・スタディーズ」。

今年度は、2019年1月4日から13日の10日間で、ポーランド、オランダ、スイスの歴史的施設や国際機関を巡りました。

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今回参加したのは9年生から11年生の生徒18名。羽田空港から11時間のフライトを経て、最初の訪問地ポーランドの古都クラクフに到着した一行は、現地ガイドに迎えられ、簡単なポーランドの挨拶を習いました。

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翌日、いよいよ本格的に研修のスタート。
まずは、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館とシンドラーの琺瑯工場を訪れ、ナチスドイツ時代にユダヤ人が受けた迫害に関するさまざまな事実を目の当たりにしました。

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アウシュビッツ・ビルケナウ博物館では、博物館最初にして唯一の外国人公式ガイドである中谷剛さんの案内で、2つの強制収容所を回りました。アウシュビッツに関する概要はもちろん、欧州における歴史教育の在り方や、日本人の歴史との向き合い方など、多角的で示唆に富んだお話を聞き、悲惨な歴史を体で感じながら、深く考えを巡らす時間となりました。

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実話をもとにした映画『シンドラーのリスト』の舞台となったシンドラー琺瑯工場では、ドイツ人実業家のシンドラーが、ユダヤ人を従業員として雇用することで虐殺からかくまっていた工場を見学。ナチス占領下のできごとを身近に感じ取りました。

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翌日は、ポーランドからオランダに移動して、刑事裁判所のための国際的残存メカニズム(IRMCT)を訪問。

スタッフから英語で解説を受けながら、旧ユーゴスラビア・ルワンダの戦犯法廷などの施設を見学し、紛争地における人権問題について学びました。

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オランダでは、マウリッツハイス美術館とアムステルダム国立美術館で芸術にも触れます。
構図の見方などの美術作品鑑賞の基本から、館内の作品配置の工夫、作品の歴史的背景などの知識まで幅広い講義を受けながら、レンブラントやフェルメールといったオランダが誇る巨匠の名画を楽しみました。

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さらに、ユダヤ歴史博物館では、ユダヤ教の礼拝や風習、ヨーロッパ社会への浸透度や歴史的影響など、ユダヤの人々や文化についてより詳しく学んだ生徒たち。ユダヤ人への迫害を象徴するアンネ・フランクの家では、自由な暮らしを奪われてもなお、力強く生きることの大切さを体感しました。
こうして実際の場所や物に触れながら感じ取ったことは、ひとりひとりの中に湧きあがる想いとともに、文献や映像などでは得られない生きた知識として蓄積されていきます。

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最後の研修地はスイス。2日間にわたってジュネーブにある4つの国際機関を訪問しました。

1日目は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際労働機関(ILO)。
各機関が扱う社会問題の実情、その問題の解決を図るための役割・使命、グローバルな環境で働くために必要な資質などについて、日本人職員の方々からお話を聞きました。
困難な課題に向かって海外の現場で切磋琢磨されている方々から直接お話をお聞きすることは、日本で得る情報以上に刺激的な体験になりました。

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職員の方々は、生徒たちにさまざまな問いかけをしたり、そこから発生した興味・関心を捉えて話を進められるなど、双方向な対話を基にした講義によって、生徒たちは国際機関についての理解を深めることができました。
また、そうしたスタイルに慣れず発言の少なかった生徒が、最後には積極的に質問をするといった、新たな自分の力を拓くきっかけにもなっていました。

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2日目は、国際赤十字本部で、国際赤十字(ICRC)と赤新月社(ICFC)の職員の方から、歴史から各関連機関の活動まで赤十字の全体像について説明していただきました。敷地内にある博物館も見学し、国際赤十字の詳しい活動状況や成果について文献で確かめました。

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ヨーロッパで過ごす最後の日は、旧市街地観光に出かけ、サンピエール大聖堂などの観光地を満喫。空港で記念写真を撮って、10日間のヨーロピアン・スタディーズを締めくくりました。

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今回の研修で、現地の空気に触れ実物を見ることで、今まで机の上で得てきた知識を、実感の伴う生きた知識として定着させた生徒たち。

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それぞれの体験と想いを胸に、国際的な舞台で活躍するキャリアに向けた一歩を刻んだ12日間のツアーを終えました。