グローバルキャリア講座

世界の貧困をなくす活動

May 7, 2015

爽やかな風が通り抜ける校舎アトリウムで、今年度2回目のグローバルキャリア講座が行われました。
前回に続き、今回も100人を超える生徒が参加し、並べた椅子が足りずに急いで追加する盛況ぶりでした。

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今回のテーマは「貧困」。内閣府国際平和協力本部事務局の境悠一郎さんを講師に迎え、シエラレオネとアフガニスタンでの経験をもとに、「貧困撲滅を目指した平和構築の現場から」と題してお話いただきました。

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境さんはまず、“国際社会がどのように貧困問題に取り組んでいるのか?”から講義をスタート。
「『ミレニアム開発目標』という国際社会が約束した目標があるのですが、そのひとつに貧困撲滅があり、さまざまな取り組みが行われてきました。それによって貧困の割合は減ってきたのですが、実際にはまだまだ課題がたくさん残っています」と熱を持って伝えます。

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グラフで表された世界の貧困の現状から、予想以上に深刻な問題であることを感じ取り、生徒たちは真剣に耳を傾けます。

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境さんがはじめに活動した場所は、アフリカのシエラレオネ。ここで取り組んでいたのは、『開かれた政府プロジェクト』でした。

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このプロジェクトは、政府が市民のニーズを積極的に取り入れることを支援するもので、その実際の様子が豊富な写真とともに紹介されました。多くの市民が集まって政治家と直接対話する写真の数々は、遠く離れた国の現状を知ることのできる大変貴重なものでした。

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ふたつ目の国はアフガニスタン。ここでは「平和・再統合プログラム」という活動に従事し、主に元反政府兵士の職業訓練、識字教育などを支援しました。そのように社会復帰が難しい兵士たちを助けることで、雇用を生み出し、街の再開発にもつながりました。

しかしながら境さんは、「それでも平和はなかなか実現しない。開発の状況も進んでいない」と話します。

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その背景には、貧困が深刻な紛争国で平和を実現し、開発の援助をするには、経済支援だけでは成り立たないという現実がありました。「なぜなら、紛争が起こるのは貧しいことだけが原因ではないからです。社会・政治になかなか参加できない人がいるといった政治的な権力の乱用も大きな要因なんです」

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貧困をなくすために長年活動し続けてきた境さんから語られることばには、現実を見てきた深みと重みがあり、生徒たちも大きな刺激を受けていました。
質疑応答の時間になると、「国連開発計画(UNDP)について詳しく教えてください」、「こういう活動をする人は境さんのように大学で政治を学ぶことが多いのでしょうか?」といった、具体的な質問もあがりました。

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講義の終わりには、世界の貧困問題や平和の実現に目を向け、それに関わる職業に触れて、また一歩前に踏み出すきっかけがあちこちで生まれていました。

Lecturer Profile
境悠一郎
Yuichiro Sakai
内閣府国際平和協力研究員。ウィスコンシン大学マディソン校卒(政治学、スペイン語専攻)。民間商社勤務後、アメリカン大学国際関係大学院終了。国連開発計画(UNDP)にてシエラレオネとアフガニスタンで勤務。主に平和構築、政府機関の能力強化、市民の政治参加、コミュニティの和解・開発といった分野に関わる。2015年1月より現職。