16回目のグローバル・キャリア講座は、講師に玉川大学比較文化学科准教授の太田美帆さんを迎えて行われました。
現在の活動のきっかけになった学生時代のボランティア体験や、新卒で入った青年海外協力隊での活動、現在学生たちと取り組んでいる東日本大震災復興プロジェクトについてお話しいただきました。
まずはご自身の原点とも言える大学時代の経験からお話がスタート。太田さんは学生時代、児童養護施設のボランティアで貧しい子どもたちの世話をする一方で、裕福な家庭の子どもの家庭教師をしていました。当時は教師を志願していましたが、両極端な子どもたちの差を目の当たりにして、日本の教育に疑問を感じたそうです。
大学最後の夏、周りが就職活動をする中、自分は何をしようかと考えたとき、フィリピンのボランティア募集のポスターを偶然見つけて参加を決意。初めてのことばかりで楽しく多くのことを学びましたが、ある時仲間たちとの会話から、「このボランティアのために払った13万円、寄付したほうがよかったのでは?」という疑問が生まれます。
自分たちで答えを出すことができず、現地のフィリピン人に問いかけ返ってきた答えが、「私たちはお金が欲しいわけではない。日本の人にフィリピンを知ってほしい。そして、あなたの周りの10人の日本人にフィリピンの現実を伝えてほしいんです」というもの。それが、その後の「伝える」活動の原点になりました。
この体験を機に太田さんは海外に大きな興味を持ち、大学卒業後は青年海外協力隊としてガーナで働くことにしました。そこでは、現地の保護者のみなさんの協力で中学校をつくる計画が実現し、「教育は親が大切だ」と実感したそうです。
帰国すると、「親が元気だと子どもが元気になる」と考えて、メキシコやパラグアイなどの発展途上国でお母さんを元気にする活動を開始。料理や洗濯を教える“母親のための学校”という考え方は、聞いている生徒たちに新鮮な印象を与えていました。
さらに、「被災地のお母さんを何かしたい」という想いで、玉川大学の学生たちと始めたのが「言葉の旅プロジェクト」。大学生が被災地を訪問して、現地の母親に会い、話を聞く活動です。
「親の生活が安定すると子どもの生活も安定する。だからお母さんたちの笑顔をつくることで教育の未来も変わる」と考えを伝える太田さん。これまでの経験が、現在の価値観をつくり、行動の原動力になっています。
最後に、「次はあなたの番ではないでしょうか?ぜひ一歩を踏み出してください」とメッセージを伝えて締めくくりました。
常に体験の中から感じ取り、考えて行動されてきた太田さんのことばには力強い説得力があり、生徒たちにとっても、自ら行動する大切さを考える時間になりました。