雪模様となったこの日、今年度最後のグローバルキャリア講座が行われました。
昼休みになると同時に生徒たちが会場に集まってきます。次の授業時間にテストを控えながら参加する生徒もいて、昼休みに行うこの講座もすっかり定着してきました。
今回の講座でお話いただいたのは、玉川大学教育学部教育学科准教授の小原さん。
ご自身も幼稚部から高等部まで玉川学園で学ばれた玉川っ子です。今回は、高等部卒業後の留学体験を、その前後の心境やエピソードを交えてお話いただきました。
最初に自己紹介として生年月日から留学先の学校まで略歴を伝えたあと、「高校1年生の時に父親から留学を勧められたが、留学することが怖くて部活動を口実に断った」というエピソードを紹介。
その後、高3の3学期に留学先の英語プログラムを受けたことで、「これからアメリカの大学生として英語で授業を受けて生活するんだな」と実感し、心の準備ができたそうです。
いよいよ留学生活がはじまり、さまざまな国の留学生たちと授業を受けるうちに、必ずしも自分が劣っているわけではないこと、文法中心の偏った学び方が揶揄されがちな日本の英語教育だけれど、その文法が留学生の自分に役立ったと振り返ります。
その後は英語の上達のために、とにかく現地の同年代の中に飛び込んで一緒に過ごしたり、ニュース番組で英語に慣れていったりと、いろいろな工夫をしていきました。
その結果、アメリカの文化や習慣、考え方の違いを実感すると同時に、「僕もアメリカ人も同じ人間なんだ」と理解したプロセスが具体的に伝えられ、生徒たちはみんなとても興味を持って聞いていました。
2年後、ステップアップのためにボストンカレッジに編入学し、そこの学生たちとの歴然とした学力の違いを目の当たりにして、「時に落ち込みながらもそれを事実として認め、自分のできることをがむしゃらにがんばろうという力に変えていった」と語る小原さん。
無事卒業して修士課程に進んだ頃に発生した「同時多発テロ」によって、ガラッと社会の雰囲気が変わったという体験もされたそうです。
その後UCLAで博士課程に進み、さまざまな個性、才能に秀でた学生たちの存在を知り、“少数派”と言われる人たちとも出会いながら留学の目標を達成した小原さんですが、その少数派である自分にとって生きづらい環境であるアメリカを、いつしか嫌いになってしまったそうです。
「けれども後年、家族とともに滞在したときには別の視点でアメリカを見ることができるようになっていた」と、当時の写真とともに紹介されました。
いろいろなエピソードを交え、時に軽妙に緩急をつけた小原さんの語りはとても楽しく、笑い声が上がりながらあっという間に時間が経っていきました。
「留学から何を学んだのか」については、“自分が留学から何を得たいのか?”が大切であること、また、留学をしなくても得ることはあり、“自分がどうしたいのかが重要である”とメッセージを伝えました。
最後に、留学中に自分を助けてくれたものとして玉川学園の「全人教育」がベースにあったとコメント。
高校生の頃、クラブ活動に打ち込みながらも勉学も手を抜かないことを信条にしていた小原さんにとって、「玉川学園の全人教育は自然に身についていた。その学び方は、勉強、スポーツ、社会活動など、総合的な経験を持つ人材を“エリート”だとする世界的な基準に合致するものだったということを、留学して知ることができた」と伝えて、今回の講義は終了しました。
生徒たちにとって具体的で身近なお話の数々は、昼休みの会場全体に活気を与えていました。