今年最初のグローバルキャリア講座は、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)理事の清水俊弘さんを迎えて行われました。
今月からは12年生(高3)の登校が減るため、10、11年生約30名が集まりました。これまでの講座に参加してきた生徒も多く、はじめから高い関心を待った様子に会場の空気はみっちりと充実していました。
清水さんは、まず「”想像力”ということを頭に置きながら話を進めます」と伝え、長年国際ボランティアの仕事に携わる中で実感されてきたことを、「反テロ」の闘いとJVCが独自に行っている北朝鮮との交流を軸にお話してくださいました。
はじめに、今世界でも大きく伝えられているフランスのテロと反テロ運動を取り上げ、それに対する日本も含めた世界の動きを紹介しながら、そもそも相手に対して敵視、偏見を持ち、やみくもに闘おうと高まる空気に、「本当にそれでいいのだろうか?という疑問を持っています」とお話をスタート。
9.11をきっかけに13年以上にもわたって続いているアフガニスタンや、一昨年夏のパレスチナでの“テロとの闘争”について、そこで犠牲になっている一般市民や子どもたちの数を示して、「このことを私たちはどのように考えていくのか?」と疑問を投げかけました。
生徒たちはその疑問について、これまで聞いてきたことから思いを巡らせ、現地のことを想像しつつ清水さんの話に耳を傾けました。
清水さんがこの仕事をするようになったきっかけは、「こんなことが自分の生きている同時代に起こっているのだ」と報道で知り、「自分は何もしなくていいのか?」と落ち着かない気持ちに駆り立てられて、JVCを訪ねたことだったと振り返ります。
そこからテロとの闘いが行われている現地にも出かけ、多くの普通の人々とその暮らしに接してきた中で強く感じたことは、「この手段は本当に正しいのか?このやり方でテロはなくなるのか?」ということであり、とても疑問に感じているのだと訴えました。
たとえば攻撃されているその国の人々みんながテロリストであるはずもなく、そこに暮らす普通の人々が犠牲になることをみんなが“想像”できていないのが現実だということ、広い視野とともに想像力を働かせることがこういった問題を越える力になること、そして、その想像力を豊かにするためにもたくさんの出会いを大切にしてほしいということを、ひとりひとりに語りかけました。
続いては今回のもうひとつの軸、JVCで取り組まれている北朝鮮との交流について。
いちばん近くて遠い国と言われる北朝鮮を、「偏見や憶測ではなく現地で直に接することで全く違った目で見られるようになった」、「交流した小学生や先生方がどんどん変化して、“個人”としてお互いを知るようになった」と実例をもとにお話しされ、隣国として今後どのように関わっていくのかをみんなが深く考えさせられました。
「日本は嫌いだけど日本の友達ができるのはうれしい」という北朝鮮の子どもたちの声に、生徒からは「なぜ嫌いなのか?どのような情報が伝えられているのか?」という質問も上がり、報道の中のことから一歩進んで、北朝鮮に暮らす人をリアルに感じるきっかけが生まれていました。
講義の終わりには、「人は“それ”ができるまで、“それ”を不可能と言う」というネルソン・マンデラ氏のことばを引用し、「偏見を越えてその先に進むために、相手に興味を持って想像すること、そして実際に出会うこととそれにつながる時間を大事にしてください」とメッセージが伝えられました。
最後の質疑応答では、「ボランティアは問題に対して“少しいいことをする”だけでなく、“問題を変えることができる”と気づいた」という生徒の感想にみんなが大きくうなずき、清水さんの「どこの国のどんな人もみんな同じだと知っているので、いつでも安心して友達になれることが財産だ」という実感のこもったことばにも、同様に共感の輪が広がっていました。