今回のグローバルキャリア講座は、駒澤大学文学部社会学科の坪井教授とそのゼミ生のみなさんを迎えて行われました。
坪井教授は、2000年にデンマークの若者がはじめた「ヒューマンライブラリー」の活動をご自身のゼミで実践されています。
ヒューマンライブラリーは、心のバリアを溶かす効果の高さから世界70カ国で開催されている活動で、社会的マイノリティの人々を本に見立て、「生きている本」として読者に貸し出す図書館というスタイルが特徴。その生きた本と読者が対話することで相互理解を深め、偏見を取り払うことを目的としています。
今回は、このヒューマンライブラリーを実際に体験するという、これまでの講座とは趣の異なる試みとなりました。
坪井教授が「生きている本」として話をするおふたりを紹介し、本の取り扱い注意点と進行の仕方を説明。通常は1人から3人の対面形式で行われますが、今回はクラスを2つに分けてそれぞれの「本」からお話を聞きました。
今回「本」としていらしていたのは、全身の体毛が抜ける病気を持つ岡村信子さんと、セクシャルマイノリティであるゲイの小関晴海さんのおふたり。さっそく半数の生徒が隣の教室に移動して、各教室に「本」を迎えます。
岡村さんは着けていたカツラを取り、「はじめてこれを見てどう思いますか?」と問いかけて、毛が無いということが想像以上に偏見の目で見られるという事実をとてもフラットな視点でお話されました。読者である生徒たちとの対話は、岡村さんの明るい人柄もあり、和やかな雰囲気で進んでいきました。
小関さんは、自分が人と違うことに気づいていく過程と家族をはじめ身近な人にカミングアウトするときの心情を伝え、「大学に行って行動範囲が広がることで視野も開け、それだけで悩みも減っていきました」と、やわらかな口調で読者たちに語りかけていきました。
実体験にもとづくエピソードとその時々の想いをありのままに伝えるおふたりの話を聞くうちに、みんなの気持ちもだんだんと開いていきました。そして、短い時間の中でしっかりとした心の交流が生まれていました。
それぞれの本を読み終えたあとは、ひとつの教室に集まって感想を伝え合います。坪井教授からは、あらためてこの取り組みによる効果や可能性について解説がありました。
お互いが「本」にも「読者」にもなりうること、実はマイノリティは思う以上に身近にいること、少人数で対話することでその人の話が他人事ではなくなること、そうして心のバリアが溶けていくことを、みんな熱心に聞いていました。
その後、坪井ゼミのみなさんがこれまでのヒューマンライブラリーの活動を紹介し、この取り組みが各地に根付きはじめていることを伝えました。
講座を終えた後は、「本」の役をされたおふたりと生徒たちがお互いの違いについて話しながら、とても自然に交流を楽しんでいました。