今回のグローバルキャリア講座は、カンボジアの地雷被害者を支援するNGO団体「アンコール障がい者協会(AAD)」設立者のセム・ソワンタさん。ご自身が地雷で両足をなくされた経験から、NGO設立、現在に至るまでのお話をしていただきました。
はじめに、12年生(高校3年生)25名がソワンタさんにクメール語で挨拶。つづいて地雷について理解するため、教室の一角に用意した地雷原モデルで地雷撤去のシミュレーションを体験しました。
埋められた実物大の地雷模型を金属探知機で探り当て、動かさないように撤去するのは想像以上に難しく、無数の地雷が撒かれた地雷原がどれほど危険で困難な場所なのか、生徒ひとりひとりが体感しました。
ソワンタさんの団体は、国際NGO団体「ピース・ボート」と協力して活動されているため、ピース・ボートのスタッフからも地雷についての説明がありました。
地雷についての基礎的な理解をもとに、いよいよソワンタさんのお話。
ソワンタさんは、兵士として赴いたカンボジア内戦の戦地で、地雷によって両足を失いました。その時の痛み苦しみ、そして絶望のあまり自分の銃を自分に向けたというエピソードは、穏やかに話すソワンタさんの口調とは裏腹に、思わず息を呑む迫力がありました。
「被害にあってからは、治療状況の酷さや、働くこともできず“物乞い”をするしかない生活にも苦しみました。そして、そこから抜け出そうと独学で英語を学んだり、小さな店を出して商売をしたりと、努力を重ねました」と、戦地から戻った後も続く苦しみと、それを乗り越えていった過程を時に熱っぽく話されました。
その後は、自身の体験をもとにNGOを設立。「自分ひとりの力では僅かなことしかできないが、たくさんの小さな力を集めることで政府にも正当に進言できるようになる」という思いで活動を続けてこられました。
体に受けた傷はもちろんのこと、失職や差別による精神的ダメージが大きな問題であることを訴え、「夢は、障がい者たちが健常者と同じように生活できること、同じように喜びを味わうこと」とおっしゃるソワンタさんの笑顔はとても大きく優しく、その温かい人柄が伝わってきました。NGO設立から11年、今では被害者の生活改善に数々の実績が出ているそうです。
生徒たちは、間近でこのようなお話を聞くことで、ソワンタさんの人としての迫力や信念の強さ、存在感から、言葉や理屈を超えて心に響く真実を受け取ることができました。
講演の後は、グループで話し合い、聞きたいことを考えて質問をしました。「障がい者たちの不安を無くすためにどんなことをしていますか?」という質問に対するソワンタさんの答えは、「“学べばちゃんと生活ができる、大丈夫なんだ”ということ、“やればできるんだ”という動機付けをしてあげることです」。これを聞いて、みんなも強くうなずいていました。
最後は、全員で記念写真を撮り、ソワンタさんのさらなる活躍を願いました。