アフリカン・スタディーズ

南アフリカで学んだ、格差の中で生き抜く精神

July 31, 2018

貧困や人権について体験的に学ぶ海外研修プログラム「アフリカン・スタディーズ」。今年は、高校1年生と2年生の20名が、7月23日から31日の9日間で南アフリカ共和国を訪問しました。

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初日は、クリップタウンにある不法居住地区を訪れました。
宿泊先からの移動の間にも、どんどん変わっていく景色に驚き、屋根が壊れかけていたり、たった6畳の粗末な小屋に6人が暮らしていたりといった、自分たちとあまりにも違う生活環境に衝撃を受けます。

「ないものを欲しがるのではなく、あるものに感謝することの大切さが身に沁みた」「同じ人間なのにこんなにも違う生活をしているなんて・・・“この生活をよくしてあげたい”という気持ちが芽生えました」と、それぞれの想いを胸に刻む生徒たち。

子どもに教育の機会を提供する支援団体“Kliptown Youth Program”の方と一緒に、手遊びやサッカーをして触れ合った居住区の子どもたちの無邪気な笑顔から、日々を生きる希望と勇気をもらいました。

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2日目は、JICAプレトリア支所での研修。職員からJICAの活動について講義を受けます。
現地の貧困問題と解決への取り組み、異なる文化で育ったスタッフ同士の連携の仕方など、現場で働く方から直接お話をお聞きして、「海外で働くとしたら、自分ならどうしようか」などとイメージを膨らませました。

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講義後は、JICAが支援する障がい者自立支援センターのレメロス・セルフ・ヘルプセンターを訪問。
センター長のピート デ ウィットさんから、障がい者同士が支え合って自立することの重要性や、障がい者と健常者の関わり方についてお話を聞きしました。

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翌日は、人類発祥の地と呼ばれる世界遺産 “スタークフォンテン洞窟”を見学して探検家気分を満喫。
類人猿から人類に進化したことを証明する化石が見つかった洞窟を探索し、さまざまな化石や地底湖を目撃し、壮大な歴史の痕跡に圧倒されながら、大きな感動を得ていました。

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4日目は、ケープタウンにあるセント・サイプリアンズ高校の生徒たちとの異文化交流を体験。

まずは「自分たちが住む町田市」や「好きな食べ物」についてプレゼン。このために用意していたスライド資料やクイズ形式でのプレゼンが、現地の高校生たちの興味を引き出し、とても盛り上がります。

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南アフリカ伝統の太鼓演奏では、叩く人によって音色が変わるという太鼓の繊細さや、演奏での一体感をとおして、ことばを使わずとも異文化の人たちとコミュニケーションすることができる楽しさを味わいました。

相手の文化を知ろう、交流のチャンスを生かそうと積極的にコミュニケーションする同世代の高校生の姿勢など、たくさんの刺激を受けました。

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5日目は、南アフリカのアパルトヘイトについて学ぶため、南アフリカ初の黒人大統領ネルソン・マンデラが投獄されていた刑務所のあるロベン島に向かいます。

「食事の量も人種によって差別がありましたが、囚人たちは食事を分けあって助け合いながら乗り越えていました」
「政治犯として捕まった人が多く収容されたこの牢屋では、アパルトヘイト後の国の理想について、たくさんの話し合いがされていたんです」。ガイドの解説を聞きながら、差別による困難の中でも希望を見出す不屈の精神を感じ取っていました。

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その後、アパルトヘイト時代の隔離政策で有色人種が強制的に住まわされた居住区“タウンシップ”を訪問。

布やブリキ、車のタイヤなどを材料にしたバラックが所狭しと立ち並ぶ貧困地区をまわり、今まで学校で調べたり人に聞いたりしただけの悲惨な事実を、現実のものとして目の当たりにした生徒たち。

そんな中、孤児院で交流した子どもたちが、日々生活することで精一杯の過酷な環境でも、思い切り遊び、無邪気に将来の夢を語る姿に接し、変革へのエネルギーと可能性を感じていました。

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最終日、アフリカ最南西端に位置するケープタウンの喜望峰を訪問。
喜望峰では、終わりのない地平線と豊かな自然を見下ろし、9日間の研修を締めくくる絶景を体いっぱいに感じました。

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「今回間近で見た、想像していた以上に過酷な貧困層の暮らしや貧富の差を知った上で、日本で暮らす高校生としてできることは何か考えるべきだと思いました」
「普段の生活に感謝して生活するとともに、この経験を周りにシェアして、アフリカの現状がさらに多くの人々に伝わればと思います」
生徒たちの感想には、自分自身も行動を起こしたいという想いが込もっていました。

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実際に自分の目で見て、アフリカの問題を体感的に理解するとともに、現地の人たちの底抜けの明るさと逆境に耐える精神に触れられた今回の研修。“自分にもできる一歩を踏み出そう”という意志を胸に秘め、生徒たちは笑顔で帰路につきました。