SGH(スーパーグローバルハイスクール)とSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の合同による特別企画、「スーパーグローバルキャリア講座」が行われました。
SGH、SSHそれぞれの代表生徒による活動報告、ロート製薬会長の山田邦雄さんをお迎えしての講演、有志生徒が参加しての座談会という3部構成で、充実した時間を過ごしました。
開始時間に合わせて、大体育館に高学年の生徒全員が集合。司会の生徒による発表者の紹介に続いて、SSHの研究報告からスタートしました。
11年生の荒井くんの研究テーマは「微粒子が及ぼす太陽光スペクトルへの影響」。微粒子「大気エアロゾル粒子」が太陽光をどれくらい抑えて地球温暖化を抑制することができるのか、難しい条件の中で四苦八苦しながら得た実験の結果を報告。
SGHからは、12年生の渋谷さんが、「アフリカン・スタディーズ」で訪問した南アフリカでの体験レポート「南アフリカの福祉の現状-障がい者」を報告。南アフリカの歴史を追いながら、現地で目の当たりにした状況や、そこで感じた衝撃と未来への想いを伝えました。
会場の生徒たちは、それぞれの発表を真剣な眼差しを向けて聞き入ります。学校という同じ場所で学び合う生徒同士、共感とともに活動への関心が高まっていきます。
発表後には、さらに核心に迫っていく質問とその回答の応酬が続き、互いの学びを深め合いました。
次の講演でお話しされる山田さんも、そんな生徒たちの様子を興味津々に見守られていました。
その後、歓迎の歌に迎えられて登壇された山田さんは、「みなさんのすごい雰囲気に圧倒されながらも、素敵だなあと思いました」とやさしい笑顔で語りかけ、会場に和やかな空気が広がります。
「まず、ロート製薬という名前を知っている人、どれくらいいますか?」。山田さんの問いかけに、たくさんの手があがります。
CMや製品の写真が紹介されると、「このCMおもしろいよね」「あ!これ使ってる!」「これもロート製薬のものだったのか!」と会場が沸きます。生徒たちは、ロート製薬を身近に感じながら、山田さんのお話にぐいっと引き込まれていきました。
「今、海外から優秀な研究者を集めて再生医療事業にも挑んでいます。日本の会社、特に研究所をもっともっとグローバルにしていくために注力しているところです」
「僕たちの仕事というのは、目薬やスキンケア商品を売ることが目的ではなく、その先にある“人々の健康”や“元気で長生きする”といったことのために働くんだと思います」
1999年の社長就任以来、スキンケア関連品を中心にした新規分野に積極的に挑戦し、過去最高の収益を上げる実績を出してきた山田さん。その成功を支える基盤にある、事業への想いが生徒たちの胸に届きます。
山田さんは会社の事業だけではなく、自身の若い頃についても、ユーモアたっぷりなエピソードとともに紹介します。
創業者の家で感じ続けた後継者としてのプレッシャー、自然や山の魅力に気づいて夢中になったスキー、大学で宇宙の秘密を解き明かそうと思ったきっかけと挫折・・・
生徒たちは、悩みを抱えつつも前向きに育った山田さんの若い頃のお話に、明るい勇気を感じていました。
「この宇宙は限りなく広く、深く、不思議に満ちています。わからないことがたくさんあり、悩むこともあると思いますが、そのわからないことにも立ち向かっていきましょう。たった一度の自分の人生を、のびのびと生きてほしいと思います」
最後に伝えられたメッセージには、ありのままの自分らしい未来に向かっていくという想いに満ち溢れていました。
質疑応答では、「はい!」と声を出してアピールしたり、間髪置かずに手があがるなど、たいへん盛り上がりました。ロート製薬に関することから人生の悩みまで、生徒たちは、キャッチボールをするように山田さんとの対話を楽しみます。
「のびのびと生きるにはどうすればいいのでしょうか?」
「どんなこともどんと来いという気持ちでいることですね。今は望んでいないことが自分に起きているのかもしれないけど、それも必ず自分のためになっていますから」
「広い心ですね」
「そう宇宙は広い!大丈夫!」。
そんなエールを山田さんが送られると、どっと笑いが巻き起こり、会場は温かい雰囲気に包まれました。
自分なりの気づきを受け取っていました。
講演後に行われた有志による座談会には、15人ほどの生徒たちが集まり、ぐっと近い距離で、次々と山田さんに質問をしていきます。
「何か問題が起きた時の対処方法はあります?」
「私にはリーダーシップがないのですが、人をまとめる上で大切なことって何ですか?」
「優柔不断なので、何を信じて決断したらいいのかがわからないです。山田さんは何を信じて決断していますか?」
そういった悩みを抱える生徒たちに、人生を大きな視点で捉え、選択肢や視野が広がるように回答する山田さん。
目の前にある悩みから一歩離れて、落ち着いてその悩みに向き合えるようになった生徒たちは、晴れ晴れとした表情に変わっていきました。
人生は長い。短いスパンで難しく考えず、のびのびとこの人生を生きていこう。そんな想いが山田さんから生徒たちに電波していました。
人生の視界が開けた生徒たちは、目の前の悩みに囚われず、未来に向かって自分らしく羽ばたきはじめていました。