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難民問題を描く映画が伝えたもの

October 6, 2017

「国連UNHCR難民映画祭-学校パートナーズ」参加イベントとして、スウェーデンのドキュメンタリー映画『ナイス・ピープル』の上映会が開催されました。

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難民問題への理解を深めることを目的として、UNHCRと教育機関が連携して取り組む「学校パートナーズ」に認定され、2回目の難民映画祭の開催となった今回。
映画の上映とともに、駐日スウェーデン大使館の広報官アダム・ベイェさんをお迎えし、スウェーデンの実情と映画に関する講演が行われました。

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放課後の16時、会場には玉川学園の生徒だけではなく一般の方々も集まりました。開会の挨拶に続いて、ベイェさんが、スウェーデンという国について、そして、スウェーデンにおける難民の歴史をお話されました。

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19世紀、餓えや貧困、宗教的迫害によって約130万人がアメリカに移住した歴史を持つスウェーデンは、難民への理解も厚く、20世紀になると多くの移民・難民を積極的に受け入れてきました。最近も、10万人以上のシリア難民を受け入れています。
しかし一方では、現実には経済や年金が脅かされるという理由から受け入れに批判的な意見もあるとベイェさんはおっしゃいます。

これはスウェーデンにおける難民問題に関する映画です。スポーツを使ってこの問題の解決を図りました。生きるために危険を冒して逃げてきた人たちがいます。あなたは彼らをどう助けられるかを考えながら観てほしいです」。
ベイェさんのメッセージを受けて、いよいよ上映がはじまりました。

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映画『ナイス・ピープル』は、ソマリア難民という過去を抱えた若者たちが、スポーツをとおして成長していく姿を追ったドキュメンタリーです。
序盤、内戦を逃れ、スウェーデンの田舎町ボーレンゲで暮らすソマリア難民の若者たちが、町の住民とうまく交流できず煙たがられる様子が映し出されます。

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それから「“バンディ”という氷上スポーツのソマリア人チームを結成し、ソマリア代表として世界選手権に出場しよう」という地元事業家の提案ではじまった特訓の日々。世界選手権が近づくにつれて、祖国でのつらい経験や異国の地にいる孤独感を共有しながら、固い絆を結んでいく若者たちの姿が丹念に描かれていきます。

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終盤の世界選手権でチームが一致団結するシーンは感動を呼び、多くの来場者が涙ぐみながらスクリーンを見つめていました。上映後、ベイェさんが話された感想にも共感の輪が広がり、会場は一体感に包まれました。

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「ソマリア人の男性が母と別々の場所に離れ離れになっていたのはなぜでしょうか?」。
「映画を見て自分も何かしたいのですが、今わたしたちにできることはなんでしょうか?」。
その後行われた質疑応答の時間でも、映画に触発された生徒たちから次々に上がる質問に、ひとつひとつ丁寧に答えを返すベイェさん。

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「日本は便利で文化も優れています。しかし、多くの日本人はそのことに慣れてしまったのではないでしょうか?世界にはそうではない国があることを理解するのが重要だと思います。ぜひみなさんも海外に行って、自分の目で見て、何かを感じてきてください」と会を締めくくりました。

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「スウェーデンでの難民に対する現実を知って驚きました。難民問題についてすごく考えさせられました」。
「少し怖いというイメージが変わりました。葛藤を抱えながらスポーツをする姿は人間味があり共感しました」。
「身近な方法で解決しようとしていたので、自分たちにもできることがあると感じられて、難民問題の解決に対する敷居が下がりました」。
上映会が終わり、それぞれに感じた想いを口にする生徒たち。

「難民の人たちを“違う人”という目で見るのはやめようと思いました。海外に行ったり、留学生と話したり、ホストとして受け入れたりしたいです」
「難民問題の背景をもっと知っておくべきだったと思いました。これから調べて、きちんと知っていきたいです」
自分たちができるアクションは何考えを巡らせていました。

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今回の上映会を機に難民問題に対する知識と、懸命に生きることへの感動を受け取った生徒たち。
「自分たちも世界に何かできる」。会場を後にする足どりはそんな高揚感で弾んでいました。

Lecturer Profile
アダム・ベイェ
Adam Beije
スウェーデン大使館 広報部 広報・文化担当官。スウェーデンの文化、ジェンダー平等、サステナビリティなどについて日本の人々に知ってもらうための、イベントや展示会のコーディネート、大学や民間団体での講演を行なっている。日本のメディアのコンタクトも担当。