久しぶりに開催された昼休みのグローバルキャリア講座。時折秋の風が通り抜ける会場に、生徒たちが続々と集まります。
講師としていらしていただいたのは、国際通貨基金(IMF)の広報官として活躍されている関岡智美さん。
IMFでの仕事と、これまでの経緯をとおして感じてこられたことを実体験のエピソードとともにお話されました。
司会からの紹介を受け、気さくな雰囲気と語り口で、すぐに生徒たちの耳目を集めた関岡さん。まず、IMFがどのような機関なのかを“3つの役割り”とともに解説。
これまでにも国際機関で活躍する方々のお話に触れてきた生徒たちは、IMFが国際経済にとって重要な働きを担っていることをすぐに理解し、真剣な眼差しを向けます。
国際的な通貨の安定と経済的向上の促進をするIMFでは、アジアを主にした発展途上国での仕事も多く、しばしば文化的なギャップに出くわすと関岡さん。
ある国際会議開催のために赴いたバヌアツでは、地元のメディアは「IMFに興味がないから」と取材を退け、約束の時間に遅れるのは日常茶飯事、設定した記者会見が中止になったり、最終的にはIMFが提供した資料をそのまま記事として掲載するなど、先進国の常識ではあり得ないことの連続。
「けれどもそれは、後進国はやはりダメだよねという話ではなく、国や地域でのやり方があり、その国のことを知らずに上から目線で押し付けるのではうまくいかないということです」とおっしゃいます。
また、一枚の写真を紹介しながら、男性社会の傾向の強い経済界に比較し、ジェンダーバランス、地域、年齢など多様な人々に配慮している国際機関との違いを例示。必要なことはダイバーシティな視点だと伝えました。
そして、「アメリカ人にとっての海外とはどこでしょう?」「日本人にとっての海外とは?」と生徒に質問する関岡さん。
そこからお話された、“グローバル”ということばが指すものは、国や目的によって違うもので万国共通語ではないことに気づいた時のこと、“189の加盟国にとってのベストを考える”国際機関としての視点についてのエピソードから、生徒たちは、ダイバーシティな視点とはどういうものかを感じ取っていました。
「ではここからは、私の経歴を少しお話します。今、将来何になろうか、どうしようかと考えている人に、“こんな人もいるんだな”と思ってもらえたらと思います」
そう言って、スクリーンに映した年表を追いながらその経歴を説明する関岡さん。留学、中退、就職、そして大学、インターン活動、大学院と、それぞれに自分自身で進む道を選択し決断されてきた歩みを証すように、ポジティブな存在感を放っていました。
「何歳の時に何をしていなければというものはない。海外では22歳は大学生ばかりではない。人それぞれの選択肢があることを知ってほしい」ということばは、力強いエールとなって広がりました。
最後に、現在IMFでインターンしている大学生が実際の活動を少し紹介。その様子は、遠くない将来の生徒たちの姿にも重なります。
今回の講演全体に流れていた「多様性」というテーマ。生徒たちは、文化や習慣、所属する場所や立場、進路の選択やタイミングなど、さまざまな局面で出会う“違い”を認めて理解することの意義を心に刻み、軽やかに未来への一歩を踏み出していきます。