グローバルキャリア講座

南スーダンで学んだ“外交の役割”

May 11, 2016

前回に引き続き、200名を超える生徒たちが参加した今年度2回目のグローバルキャリア講座は、会場を移し、いつもより大きなスクリーンを使って行われました。

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今回は、大学・大学院で国際関係の分野を学び、国連機関で働いてきた経験を持つ、内閣府国際平和協力研究員(PKO事務局)の小林綾子さんを講師に迎えました。
「南スーダンで考えた、異文化理解と外交の役割」というテーマで、仕事で赴いた南スーダンとそこで学んだことについてお話いただきました。

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まずは異文化理解について、南スーダンの場所や歴史といった国の概要から、“日本とはココが違う!”という点まで、写真を使ってわかりやすく紹介していきます。

「南スーダンには、世界で一番身長の大きな部族がいて、平均身長は190cmです」

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「南スーダンでは、牛はお金と同等の価値があり、結婚するときに、男性から女性の家族に牛を贈る風習があります」

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「南スーダン人は、内戦があったせいか、身近な家族を思いやる気持ちがあり、“家族意識”が強い人たちです」

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写真はもちろん、現地の人たちと交流したエピソードを伝えたり、その人のものごとの捉え方がわかる「アイデンティティ・サークル」で南スーダン人の家族意識を説明するなど、異文化とはどういうものかをさまざまな角度から説明していただきました。

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生徒たちは、驚いて「えぇ!」と思わず声を出したり、おかしくて笑ったり、深刻な問題を真剣に聞き入ったりと、今まで知らなかった異文化の話を終始興味深く聞いていました。

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日本とは大きく異なる文化を持つ南スーダン。そんな南スーダンでの仕事・外交を行うことは、非常に大変だったと小林さんは振り返ります。

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仕事をしていて特に悩んだのは、日本人と南スーダン人の時間感覚の違い。
時間に厳しい日本側からは「もっと早く仕事を進めなさい」と言われる一方で、日本の時間感覚で南スーダン人に仕事を求めると、「時間はまだありますよ。早くやることは私たちのやり方じゃない」と言われてしまい、最初はうまく両者の折り合いをつけることができませんでした。

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しかし、小林さんはそうした文化の違いを受け入れた上で、粘り強く仕事をしていきます。
「急ぐ日本側には、『ここの人たちにはこういう傾向があります』」と伝え、理解してもらいました。その一方で、毎日南スーダンの人たちに会って諦めずに説得し続けた結果、彼らも『日本人はそういうやり方なんだよね』と歩み寄ってくれました」

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そのようにして忍耐強く両者の間に立ち、お互いの理解を促したことによって、異文化の国同士の外交をうまく行うことができました。

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この経験から小林さんが学んだことは、外交とは“架け橋”であるということ。“異なる文化の人たちがお互いを理解し、物事がうまく進むように折り合いをつけることである”、ということでした。
「私は、南スーダンと日本の架け橋になりたいと思います」ということばには、静かな決意が込められていました。

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「外交は大きな会議で行うイメージがあるかもしれませんが、こうして現場で取り組むこともあります。みなさんも国際キャリアに関心があれば、是非現場に飛び込んでください」。穏やかに伝えられたそのメッセージには、実際の現場で仕事をしてきた小林さんだからこその説得力があり、生徒たちの背中を優しく押す力がありました。

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それを受けた生徒たちからは、「将来アフリカで活動したいのですが、学ぶべき分野はなんですか?」、「南スーダンの食文化はどんな感じですか?」「南スーダンの医療はどうなっていますか?」とたくさんの質問があがりました。

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現地での“架け橋”というリアルな外交の力を知り、もっと異文化を理解したい、さらには、海外の現場でキャリアを積みたいという意欲が増す講義になりました。

Lecturer Profile
小林 綾子
Ayako Kobayashi
国連開発計画(UNDP)東京事務所インターン、NGO及び民間企業勤務後、外務省専門調査員(政策担当)として、在スーダン日本国大使館で、独立前後の南スーダンの和平プロセスや国家建設の調査業務に従事。内戦における人道アクセス問題を研究テーマとし、国連人道問題調整事務所(OCHA)、ニューヨーク本部にて文民保護政策担当インターンを経験。現在博士論文執筆中。2016年4月より内閣府国際平和協力本部事務局国際平和協力研究員。