今年度1回目のグローバルキャリア講座には、高等部の校舎に通うようになったばかりの9年生を中心に、約250名の生徒がアトリウムに集合。3年目の玉川SGHプログラムは、知名度が上がり、より多くの生徒の注目を集めています。
今回講師でいらっしゃったのは、NGO職員として発展途上国の支援を行い、内閣府国際平和協力研究員(PKO事務局)としても仕事をしてきた田邉宙大さん。
世界で働いてきた経験から見えてきた、「世界で通用するために、日本人はどうリーダーシップを発揮するべきか」についてお話いただきました。
最初に、自己紹介として幼い頃の写真が写し出されると、生徒たちからは「かわいい~」という声が上がります。
マラウイの貧困削減、パキスタンの水害支援、南スーダンの帰還民支援など、NGO職員としてさまざまな国に訪問してきた田邉さん。そこでの活動について写真を交えて、テンポよく紹介していきます。
初めて参加する9年生の生徒たちも、世界の出来事に自然に意識が向いていきました。
その後、今回のテーマであるリーダーシップについてのお話がスタート。
「世界の中で日本人はリーダーシップがないと言われますが、その理由について“ヘーゲルの弁証法”をヒントに考えていきます」。
弁証法とは、“ある意見に対して別の意見をぶつけることで、最初の意見だけでは出なかった、よりよい意見を生み出す方法”です。
海外で仕事をしたとき、互いに意見を伝え合うという弁証法に基づいた手法によって、仕事をよりよい形に発展させてきたことが多かった田邉さんですが、日本人はそれが苦手だと度々感じるそうです。
「“空気を読むこと”が多い日本人は、意見をはっきり伝えることが少ないので、弁証法のような話し合いが苦手です。周りの目を気にして、自分の意見を言わず、決断力と判断力に欠けてしまうこともあります。それが日本人はリーダーシップがないと言われる所以ではないでしょうか?日本人は“自分の意見を伝えること”をもっと意識する必要があると思います」。
最近のドラマやニュース、日本の歴史を例に挙げて、日本人の特徴についてわかりやすく解説。海外経験のない生徒も大きくうなずき、「本当にそうだよね」と隣の友達に伝える生徒も。
一方で、田邉さんは空気を読む日本人らしさが活きてくる場面にも出会いました。
さまざまな発展途上国におもむいた時、自分たちのやり方を伝えるだけでは、現地でうまくいきませんでした。
「ただ一方的に善意を押し付けても、それでは現地に活動が根付いていきません。まずは、しっかりと相手を見て、その国の人たち、その国の性質を知り、きちんと受け入れる。その上でやっと、援助・支援を行うことができるんですね」。
そこで、田邉さんが勧める日本人のあるべきリーダーシップとは?
――「和をもって、自分の意見を言うこと」。日本には“和をもって尊しとなす”ということばがあるように、まずは何をやるにも相手を受け入れ、相手を尊敬します。そのように日本人らしくありながらも、空気を読み過ぎて終わることなく、自分の意見をしっかりと相手に伝えることが重要だと、生徒たちにとって、とてもわかりやすく貴重なアドバイスをいただきました。
講義後、生徒からさっそく質問があがります。
田邉さんはひとつひとつの質問に答えつつ、「もし海外に行きたければ、ぜひ行ってみてください」「前例がないことでも海外ではそれが求められている。誰もやったことのないことに勇気を持って挑戦することも大切です」と、熱いメッセージを伝えていただきました。
感想を書いた付箋の貼られたボードには、「今日学んだことを日常で生かして、リーダーシップを実践していきたい」「空気を読むことより、伝えることを心がけて行動しようと思った」「リーダーシップとは何かがはっきりとわかり、これからどうしていくべきか知ることができた」といった感想が挙がっていました。
情熱的に語る田邉さんの話を聞き、リーダーシップに関する気づきと、リーダーとして進んでいく勇気を得た生徒たちは、高揚した表情で会場を後にしました。