今年度を締めくくるグローバルキャリア講座、今回の講師は、玉川大学観光学部教授の大嶋英一さん。外務省外交官としての経験をもとに、外交の仕事とそこから学んだ国際人になる方法についてお話しいただきました。
「目指せ国際人~国際協力の現場から」というタイトルでの講義は、大嶋さんが外交官として駐在した7カ国のうち、2012年から2年間勤務したフィジー共和国の紹介からはじまりました。
世界有数の南国リゾート地の様子や常夏で育ったフルーツと食事について、大統領に市場でばったり出会ったりするというエピソードが写真と共に紹介されると、生徒たちからは「おぉ〜!」「すごい!」と、楽しそうな声が上がりました。
それまで知らない国だったフィジーが現実味を帯びてきたところで、“外交とはなにか”について、フィジーでの外交を例にお話が続きます。
「外交には2つの目標があります。1つは問題を起こさないように他の国と仲よくすること。2つ目は国益を守ること。後者は特に自分の国だけが利益を得るのではなく、どうしたらウィンウィンの関係になるかを考えなければいけません」と伝える大嶋さん。
着任当時、日本は政治的な事情でフィジーに緩い制裁をしていたため、地元の新聞には「新日本大使は冷遇されるだろう」と大きく報道され、そのことばどおりフィジーとの外交は難航。首相とはしばらく会うことができず、3ヶ月後にやっと会えたときもお互いの意見の違いから喧嘩別れをしてしまったそうです。
そこで大嶋さんは関係改善のために2つのことを実行。ひとつは、政府関係者などの重要人物と交流を深めて信頼関係を築くこと。もうひとつは、河川の洪水を防止するプロジェクトや壊れた橋を修復するなど、フィジー国民に見える形で貢献することでした。
その2つを実行した結果、地元の儀式で歓迎を受けるほど感謝されるようになり、1年半後首相と仲直りして、良好な外交関係を取り戻すことができました。
「外交と言っても、人と人との関係なんです。まずその相手と仲よくなることが大切です」。穏やかながらきっぱりと言い切る大嶋さん。
「必要なのは、歴史を学ぶこと。英語を学ぶこと。新聞を読むこと。それらによって相手を知ることができ、仲よくなるきっかけになります。そして海外旅行。日本と外国との違い、生活、食べ物、歴史はどうなっているのか、自分の目で見て感じることです」。そのような“今からできる、国際人になるためのヒント”は、普段の生活から実行できることばかり。生徒たちもうなずきながらしっかりメモを取っていました。
生徒たちの感想には、「関係を築くには思いやりや歴史などの知識が大切だと感じました」「国や地域の考え方の違いを理解して、相手の意見を受け入れ、自分の意見も伝えることが大事だと思いました」といった“関係を築くこと”の学びや気づきがたくさんありました。
「相手と仲よくする」ことが、人と人、国と国をつなげる基本にあること、コミュニケーションする力、人間力を磨くことが、
“国際人”としての一歩になるということが、とてもわかりやすく実感できる講義となりました。