登校が1月までの12年生(高3)には、最後のグローバルキャリア講座となる今回。講座後、付せんに感想を記入して模造紙に貼り付ける新しい試みもはじまりました。
今回の講師は、国連ボランティアや国際農業開発基金を経て、JICA専門家として貧困や国際協力に取り組まれる戸田亜理子さん。そうした仕事に携わるようになったきっかけ、その仕事で感じたこと、「農村開発」の現状についてお話しいただきました。
「これまでたくさんの出会いと多様な考え方に感銘を受けてきました。私がどういう道を歩いてここにたどり着いたかをお話します」。集まった生徒たちは、穏やかながらまっすぐ気持ちに届いてくる戸田さんの語り口に、冒頭からぐっと引き込まれます。
戸田さんが国際問題に興味を持つようになったのは、高校生の時に観た『アラビアのロレンス』という映画がきっかけでした。舞台となった中東のパレスチナ問題をはじめ、さまざまな国際問題を知るうちに、「将来は、貧困で悩む人を救う活動をしたい」という想いが芽生えたそうです。
大学で、平和学者ヨハン・ガルトゥング博士の提唱する「平和の定義」を学んだ時には、発展途上国と先進国の関係性が貧困を生み出しているという「構造的暴力」の考え方を知り、「自分もそれに関与しているんだ」と衝撃を受けました。そして、「自分の立場からできることはないのか?」と強く思ったというエピソードを紹介してくださいました。
社会奉仕団体に就職してすぐに起こった阪神淡路大震災。ボランティアのコーディネーションに関わった戸田さんは、その後トロント大学でコミュニティ開発を学び、支援する側とされる側がどのように関係していくのか、国際協力のあり方について研究を重ねていきます。
「ささいなことの積み重ねで今の自分がいます。その時その時に感じたことを大切にするのが大事だと思います」。
高校の時に感じた想いを原点に、自分の感覚を大切にしながら学び、経験を積んできた戸田さんが次に選んだのは、貧困の中で“最も優先的に解決すべき問題である”と感じた「農村開発」でした。
人が生きる上で欠かすことのできない「食」に密接に関わる農村を救いたいと考え、国際農業開発基金(IFAD)で、農村開発のプロジェクトに従事。「政府」「援助団体」「プロジェクトを実行するチーム」という三者の言い分を聞いて、農村がうまく発展できるようにコーディネートしました。
戸田さんが実際に担当したモンゴルやマラウィの写真とともに、農業の経済貢献度や各国の農業予算など、世界の“農村”に関するデータを紹介。わかりやすい説明に、生徒たちは農村の現状とその重要性を実感していました。
「世界はみんなつながっていて、自分が動くと世界も動きます。ちょっと行動を変えれば、それは世界を動かす歯車になるのです。1%でも世界がよい方向に変わる可能性があれば、私はそれにかけたいと思います」。
講義の最後に戸田さんは、どんな時にも心に留めていた想いを生徒たちに伝えてくださいました。
自分の感覚を信じ、信念を持って活動してきた戸田さんのメッセージをしっかり受け取った生徒たち。
「自分の気持ちを大切にするのが重要だとわかりました」「まずは身近なボランティアに積極的に取り組みたい」「自分の小さな行動がある人の大きな力になることを忘れずに過ごしたい」と、小さなハート型の付せんに、それぞれの想いを書き込んでいました。