2016年最初のグローバルキャリア講座は、国際協力銀行(JBIC)、経済協力開発機構(OECD)パリ本部で、世界の国々と関わるキャリアを積まれてきた笹川亜紀子さんをお招きして行われました。
笹川さんが、これまでの仕事とその経験から感じたこと、「日本人は国際舞台で活動し、どう貢献していくべきか」についてお話しいただきました。
笹川さんがキャリアをスタートさせた国際協力銀行(JBIC)は、日本と国際社会にとって重要なプロジェクトに、様々な金融手法で支援を行う政府系の機関。
電力不足に悩むインドの国営発電公社に、日本製の発電機器を購入する資金を融資し、その地域の安定的な電気の供給に貢献したという、笹川さんが関わったプロジェクトの例を最初に伝えられました。
「ただお金を貸して発電機器を買ってもらうのではなく、現地の環境や人々の生活に与える影響を考えることが必要です」。
現地の写真を交えたリアルなエピソードから、インフラ事業に携わるとはどういうことか、継続的な視点で見ることの大切さがわかりました。
2010年には、経済協力開発機構パリ本部に出向された笹川さん。「日本人の正規職員の数はどのくらいいると 思いますか?」とみんなに質問。
「ちょっと少なくて、100人程だと思います」と答えた生徒に、「20人程なんですよ」と回答すると、生徒たちは想像以上の少なさに驚いていました。
「日本人が少ない中で、どうプレゼンス(存在感)を発揮しようかと考えました」。
配属されたチームでは日本人はひとりだけ、さらに周りは数十年もの経験がある多国籍の人々の集まりでした。若くて文化も異なる笹川さんにとって、最初は信頼を得るのが大変だったそうです。
粘り強くコミュニケーションをし、自分の意見を必ず伝えるように努めることで、周りから質問されたり、意見を求められたりすることがだんだん増えていったという笹川さん。「周りの考えを聞き入れつつ、フレンドリーに自分の意見を伝えていくこと。それが、周りの人たちとの距離を縮めるのに重要だと思いました」。
経済協力開発機構で貿易に関連する国際会議の運営をしている時にも、日本人のあり方について考えさせられることがありました。
各国の代表が集まる国際会議で、日本と他国の「交渉方法」「立ち居振る舞い」の違いを目の当たりにして、バックグランドの違う相手と対等にコミュニケーションする力が重要だと強く感じたそうです。
「相手との“違い”を理解して、共感をもとに自分の意見を伝え、互いの“違い”を結びつけます。それによって創造性のある案を生み出すことが大切です」。
ご自身が海外で仕事をしてきた経験、また多国籍の中の日本人を見てきた経験を踏まえて、生徒たちにメッセージを伝えます。
優しい笑顔の中に、ぶれない強い軸を感じさせる笹川さん。生徒たちは、穏やかな口調で伝えられる臨場感あるお話に終始聞き入っていました。
世界の舞台で“違い”を受け入れながら、日本人としての自分を保ち相手を認める。
そのバランスのとれた姿勢は、生徒たちに、国際舞台で働く日本人としてのひとつの理想の姿を示していました。