グローバルキャリア講座

世界を知り、違いを尊重すること~「イスラムを知るために~真の国際理解とは」

October 28, 2015

「みなさん、こんにちは。今日はイスラムの国際理解についてお話をしていきます」。満場の拍手で迎えられて登場した池上彰さんのお話がはじまりました。

今回のグローバルキャリア講座は、ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授の池上彰さんをお招きし、特別版として開催。高等部の生徒全員が講義を受けました。

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社会の出来事を誰にでもわかるように説明する報道記者・番組キャスターとして数々のメディアで活躍し、幅広い層の支持を受ける池上さん。いつもテレビで見ている人を目の当たりにする高揚感と、明快でわかりやすいお話のおもしろさに、生徒たちは終始集中して聞いていました。

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近い将来、キリスト教を抜いて世界で最も信者の多い宗教になると予測されるイスラム教を、ぜひ身近なこととして知ってほしいと講義をスタート。
「3つの宗教を比較することで、イスラム教という宗教が浮き彫りになります」。同じ神を信仰するユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれの宗教について、ホワイトボードにキーワードを書きながら説明する池上さん。

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各宗教の起源や歴史的背景、成り立ちにまつわるエピソードなど、豊富な知識に裏打ちされた解説は、馴染みのない宗教の考え方や専門用語もすんなりと理解できる明快なものでした。多くの生徒たちが、聞き逃すまいと熱心にメモを取っていました。

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池上さん自身が“日本人としてどうあるべきか”を考えさせられたという体験談もありました。イスラム教徒の知り合いに、信仰心ではなく娯楽やビジネスとしてクリスマスを祝う日本人のあり方を非難された話、信仰する宗教が無いという理由で他国でうまく生活できない日本人の話は特に印象的でした。

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お話の締めくくりは生徒へのメッセージ。
「合格祈願のために神社に行き、クリスマスを祝い、葬式は寺で行う日本は、世界から見ると宗教が混合する変な国です。しかし、宗教の違いで国同士の争いが生まれている世界では、日本人のように異なる宗教や価値観を受け入れ、それぞれを尊重することも必要とされています。さまざまなものを受け入れられるようにするために、まずは宗教や国ごとの価値観について知ってください」

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講義後の質疑応答では時間内に収まり切らないほどの、たくさんの手が挙がりました。ひとつひとつの質問に答える池上さんのことばにはさらに熱が入り、生徒たちも一層理解を深めていきました。
「その宗教にとっての“よい行い”とは人が決めるものなのか?」という生徒の洞察に、「いい質問だねぇ!」と感嘆する池上さんと、それに共感した生徒たちの拍手で、会場が大いに沸いた場面もありました。

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ジャーナリストの公平な視点と共に、ご自身が見てきた世界を熱っぽく伝える池上さんのお話は、生徒たちの知的好奇心を大いに刺激するものでした。そして、世界を知りたいという意欲、世界の中の日本人としてどのようにできるかを考えるための、たくさんの学びがもたらされた特別講義となりました。

Lecturer Profile
池上 彰
Akira Ikegami
1950年、長野県松本市生まれ。1973年、NHKに記者として入局。松江、呉での勤務を経て、東京の報道局社会部へ。事件、事故、災害、消費者問題、教育問題などを取材。1994年から2005年まで「週刊こどもニュース」キャスター。2005年独立。現在はジャーナリストとして多方面で活躍し、東京工業大学リベラルアーツセンター教授を務める。