グローバルキャリア講座

“やってみる”ことで見えてくる将来のみち

February 14, 2019

さまざまな分野でグローバルな活動をされている方々のお話をお聞きする「グローバルキャリア講座」。今年度最後となる講座は、特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース代表理事の村上千恵さんより、ダイヤモンドにまつわる国際支援活動と、これまでの経験から得られた進路選びのコツについてお話しいただきました。

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まずは、自己紹介として、これまでの経歴を伝える村上さん。スクリーンには、広告代理店、コンサルティングファーム、学習塾、JICAといった名が次々に並び、その多彩さに驚きの声が上がります。

そんな村上さんのキャリアの原点は、大学2年生のときに見た、『ハゲワシと少女』というタイトルの1枚の写真にあります。ハゲワシが飢えた少女を狙う瞬間を捉えたと言われるこの写真を見たとき、少女と自分の境遇の違いに衝撃を受けるとともに、「わたしが日本に生まれてきた意味って何だろう。何のためにここにいるんだろう」という考えがめぐったのだと振り返ります。

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そして、「自分が日本で受けた豊かさの恩恵を途上国にも与えたい」という想いとともに、国際協力の道に進むことを決意した村上さんは、そのために不可欠な大学院進学を目指して本格的に英語の勉強を開始します。帰国子女の友人と受けた試験で自分だけ不合格になる悔しさを味わい一念発起し、英字新聞の社説の要約や英文での文通をとおして英語力を磨き、見事、アメリカの大学院に進学します。

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そうして村上さんは着実な努力で確かな英語力を身につけ、海外と日本でさまざまなキャリアを重ねていき、2015年、ダイヤモンド取引における問題点や課題の啓発活動などを行う団体、ダイヤモンド・フォー・ピースを設立。その転機をつくったのは、ご自身の結婚のとき贈られた婚約指輪でした。

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「ダイヤモンドなんだから、きっとハッピーなストーリーがあるに違いないと思っていたら、実はそうではないと知って驚きました。アフリカのダイヤモンドが採れる地域では、内戦で使う武器を調達するための資金源になっていたのです」

指輪をきっかけにしてダイヤモンドについて調べるうち、多くの問題があることを知った村上さんは、現地の労働者が搾取に抵抗して自立できるように、効率のよい採掘の技術や、副業で収入を増やす方法を伝えるなどの支援活動をはじめられました。

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ダイヤモンドを資金源とした内戦や、児童労働、搾取の問題など、ダイヤモンドをめぐる負の側面について、現地の生々しい様子とともに聞いた生徒たちは、ダイヤモンドの持つイメージとかけ離れた過酷な現実にことばを失いながら、そうした事実があることを徐々に受け止めていきます。

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講演の終盤には、村上さんの多種多様な経験を踏まえて、進路を選ぶ際に大切なことを伝えていただきました。

「若いときには、“これが自分の仕事!”と思っても、やってみると違うということがあります。ですが、同じことを一生やらないといけないという決まりはありません。選び直してもいいわけです」
「いろいろ経験しているからこそ、好きなものが見えてきます。なので、“まずやってみる”ことが大切だと思います」

「これだ!」と思ったことに飛び込み、自分に合う仕事を見つけてこられた村上さんの生き方を映したメッセージは、力強いエールとなって生徒たちに届いていました。

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「いろいろな体験をされていて、それが仕事に結びついているのがすごいと思いました。自分の今の経験も、将来につながっているんだと感じられて、勇気をもらいました」

それぞれに将来につながるヒントを受け取った生徒たちは、朗らかに表情を輝かせていました。

Lecturer Profile
村上 千恵
Chie Murakami
アメリカの大学院を卒業後、ハイチやラオスにて国際協力の仕事に携わる。帰国後、広告代理店、ビジネスコンサルティング企業勤務を経て、独立し教育事業を運営。2008年の結婚の際贈られた婚約指輪をきっかけに、ダイヤモンドの裏の問題に気づく。2009~2011年、国際協力機構(JICA)の専門家としてケニアに赴任。2012年からシエラレオネやリベリアを視察し、2015年、特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピースを設立。日本・リベリアにおける活動全般の指揮にあたる。