グローバルキャリア講座

リアルな現場で、目の前の人に貢献する仕事

June 23, 2016

今回のグローバルキャリア講座は、国際機関で武装解除や復興援助の仕事をされてきた、内閣府国際平和協力研究員の小山淑子さんを講師にお迎えしました。

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テーマは、「国際機関のしごとのリアル」。
「武器、兵士、自然災害。この3つのキーワードについて、3つの国際機関で勤務してきた経験をもとにお話しします」と講義をスタートされました。

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はじめのお話は、特に印象深かったエピソードから。
それは、大学院卒業後、国連軍縮研究所(UNIDIR)でカンボジア、マリ、アルバニアで小型武器回収の調査をした時に遭遇したできことでした。
「アルバニアの軍事施設で放置されていたライフルや砲弾を、子どもたちが危ないと主張する町内会のおばさんたちが、素手で解体していたのです」。

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続いて話されたのは、コンゴ共和國で兵士を出身国に送り返す仕事に従事していた時のこと。
その仕事に就いて最初にびっくりしたことは、出会った2人の脱走兵の体から発せられる悪臭でした。幼い頃に誘拐された2人は、無理やり兵士にさせられてから一度もお風呂に入ったことがなかったのです。

「その時、体を綺麗にすることは人間の尊厳なのではないか?と、体を洗うことが人間の尊厳を保つための儀式のように思えました」。

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過酷な現場でのお話はさらに続きます。家族や友人が全員亡くなり、自分しか残されていないという元兵士。家族を殺されレイプされたことをきっかけに、1000人の女性兵士を組織した女性のこと。
生徒たちは、衝撃的なエピソードに圧倒されながら、じっとその現実に聞き入っていました。

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最後のお話は、国際労働機関(ILO)で、アジア太平洋地域での自然災害対応の任務に就いた時のことでした。
「現地で感じたことは、被災者の方たちの“仕事・商売をしたい”と願うたくましさ。このたくましさこそが被災地でのリアルな想いだと思いました」。

現地の人々の想いを実感した小山さんは、それを政策に反映させたプロジェクトをつくり、実現するために力を尽くしてきました。

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長年リアルな現場で、目の前の人への貢献と、人権を守ることを信条に活動されてきた小山さん。
そのことばには、極限の中でも生き抜こうとする人たちへの深い愛情と、想いを受け止めてきた体験の重みがありました。

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講義後、大きな刺激を受けた生徒たちからは、「世界の“リアル”を知り、日本は本当に平和な国だと実感した」「戦争や人権問題のために自分も何か貢献したい」「国連で働きたい。どうすればそれができるのか」といったたくさんの声があがりました。

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平和な国で暮らすことのありがたみを噛み締めた生徒たち。
戦争や人権問題に関心を向け、リアルな世界に大きく視野を広げるきっかけを受け取りました。

Lecturer Profile
小山 淑子
Shukuko Koyama
筑波大学第三学群国際関係学類を卒業後、2001年に英ブラッドフォード大学大学院にて修士号を取得。修士課程在籍中の1999年に、「グルジアおよびタジクの紛争解決研究」で第1回秋野豊賞を受賞。国連軍縮研究所(UNIDIR)にてマリ、カンボジア、アルバニアでの小型武器回収の調査、コンゴ民主共和国のPKOでのDDR、SSRに従事した後、2007年より国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部に勤務、DDRおよび紛争復興社会の民間セクター開発を担当。2011年よりILOアジア太平洋地域総局にて、自然災害対応・復興支援に従事。2016年4月より現職。