グローバルキャリア講座

好奇心が導く国際理解

February 10, 2016

今回のグローバルキャリア講座でお話しいただいたのは、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の鈴木義一さん。『日本のロシア理解と日ロ関係〜地域国際関係研究の意義』と題して、研究内容と併せ、国際的に活躍するために必要なことは何かを伝えてくださいました。

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「ロシアは近くて遠い国です」。はじめに日本とロシアの地図を映し出して地理的な近さを示した後、“心理的には遠い”ことを表すデータを紹介しながら説明される鈴木さん。

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『日本人のロシアに対する親近感』『現在のロシアと日本の関係』についての意識調査では、大多数の日本人がロシアに対してマイナスなイメージを抱いているという結果が。一方で、ロシア人が日本に対して抱くイメージは好意的なものが多く、両者の違いの大きさに生徒たちは驚きの表情を見せていました。

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また、日本の大学生が、「ロシア人は見た目が冷たく、感情が表に出ない」というイメージを持っていると聞いて、「全く逆なのに」とショックを受けていた留学生のエピソードや、“怖い、冷たい”イメージに少なからず影響しているプーチン大統領も、ネットで検索すれば笑顔の写真だってあるといった意外性のある解説で、ロシアが身近になっていきました。

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続いて、強大な与党政治、マスメディアの統制などから、「かつての民主化路線から権威主義化している」と言われたり、ウクライナ東部分離独立派の支援、クリミア共和国の併合で、「国際社会のルールを守らず拡張主義を行っている」と論じられることの多いロシアの政策について説明。

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「否定的な観念で見られがちなロシアですが、ロシアにはロシアとしての正義がある。どういう背景があり、どうしてその問題が起きているかを知ることが大切です」と、伝える鈴木さん。
生徒たちにとって身近なSEKAI NO OWARIの『Dragon Night』の歌詞が引用され、相手を理解することへの共感が広がっていました。

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「ある国を理解するために研究者に必要とされることは、まずその国をよく知ること。それを批判的に考察し、その国でどういう問題が生まれるのか分析すること。重要な情報を得るために、その国の言語を勉強すること。複数の学問分野からの分析も必要なので、学際的な研究をすることです」。

国を理解するためのこのようなアプローチは、グローバルなキャリアを選ぶ生徒だけではなく、より国際化する社会での重要なヒントとして、多くの生徒がメモを取っていました。

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最後に、「英語の勉強も必要ですが、何よりも日本との違いに好奇心を持って追求することが、大学でも海外で異文化を学ぶためにも大事です。おもしろいと思えることを見つけたら、ぜひ深めてみてください」と、多くの学生に接してこられた大学教授の立場から、国際的に活躍するために必要な姿勢を伝えてくださいました。

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講義後には、「近い将来ロシアはどのような国になるとお考えですか?」「日本ロシア間を良好にするには何が必要ですか?」と次々に質問の手が。休み時間にも熱心に話を聞きにいくなど、積極的に知ろうとする雰囲気が高まっていました。

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常に好奇心を持ち、新鮮な目で世界を見る。講義の間一貫して伝わってきた鈴木さんの研究者としての姿勢に、生徒たちはたくさんの刺激を受けていました。

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Lecturer Profile
鈴木義一
Yoshikazu Suzuki
1987年東京大学卒業後、ロシア国立人文大学へ留学。東京大学経済学部助手を経て、1995年より東京外国語大学勤務。2009年より同大学院総合国際学研究員 教授。専門は現代ロシア経済、ソ連経済史。NHK「まいにちロシア語」の教科書(共著)など著書多数。