グローバルキャリア講座

グローバルな関りで必要なこと

January 22, 2019

新年最初のグローバルキャリア講座が「グローバル時代のキャリア形成」というテーマで行われ、グローバルに活躍するために必要なのはどのようなことなのかをお聞きしました。

国立大学法人 政策研究大学院大学副学長を務められ、開発経済学の分野で多くの功績をあげられている園部哲史さんをお招きして、ご自身の経験をとおして得られた“必要な力”についてお話しいただきました。

DSC00020

「“キャリア形成”というのは、精神的にも物質的にも豊かな暮らしをするのに十分な収入を得られるように、能力を高めるプロセスです」
今回のテーマについて説明される園部さんの語り口は穏やかで優しく、生徒たちはすんなりと聞き入ります。

ABS_4128

「グローバルな社会でキャリア形成をする際には、外国人と関わることが不可欠になります。そこで、“外国人とはどんな人なのか”を考えることが大事です。では、日本人と外国の人々は何が違うのでしょうか。感情や能力、ユーモアのセンスでしょうか?」と語りかける園部さん。
「実は、日本人と外国人の間には、それほど違いはありません」とおっしゃいます。

ABS_4131

「日本と外国で、“個人”はあまり変わりません。ですが、個人が生きる“社会”は大きく異なります。世界には平和で豊かな社会を実現している国もあれば、戦争をしていて社会全体が貧しい国もあるので、個人の背景にある社会の違いを理解しないと、本当の意味での友情は生まれないし、上手に競争をしていくこともできません」

個人が育った“社会”を理解することが、外国人とのコミュニケーションの土台になる。そのことが、研究者として多くの国の人々と関わってこられた経験に裏打ちされた強い説得力を持って、生徒たちに伝わっていました。

DSC00012

続いて、発展途上国で行ってきた支援や研究の活動についてお話しされます。

園部さんが研究されている開発経済学は、貧しい社会が存在するのはなぜなのか、そして、どうすれば貧しい社会を豊かにしていけるのかを考えるものです。そして、この問いに答えを出すべく、長年にわたって途上国の企業活動を改善する効果的な方法を探求し続けられています。

DSC00001

そうした活動の中で見てきた途上国の企業の実態について写真とともに解説。
「アフリカでは、長く働いている従業員でも、技能の水準がアジアよりも低いというのが現状です。また、経営者は若い従業員の励まし方や肉体的・精神的に負担の軽い働き方を理解していません」

生徒たちは、日本ではあたり前に守られていることが途上国の企業ではできないという事実に驚きつつ、真剣に耳を傾けます。

DSC00016

「技能も効率性の水準も低いにもかかわらず、途上国の企業の経営者の多くは“私はできている”と考えているため、なかなか仕事の改善をする動きを起こしません。それでも、 “道具の置き場を決めておき、出したら元の場所に戻しましょう”といった基本的なことを指導するだけでも効率化し、彼らも変わっていきます」

ABS_4147

「また、途上国での研究には多くの費用が掛かります。その費用を得るため、資金を提供してくれる人に“これから行う研究がどれだけ意義があるのか”を情熱を持って伝えてきました」

研究のために現場に身を投じ、費用を集め、途上国の発展のために尽力されてきた園部さんのお話からは、地道に成し遂げてきた人の持つ意志の力が、ひしひしと伝わってきました。

DSC00018

「研究をするためには費用を集める必要があります。そのためには、“どうしてもこの研究がしたい”というパッションを示さなければなりません。その点は日本人と外国人に違いはありません」
「優秀な人はたくさんいます。そんな人を見るたびに落ち込んでいてもしょうがない。他人と比べず歩んでいく鈍感力も大事です」

最後に、「研究の経験から学んだこと」として、グローバルな社会で必要な心構えについて、さまざまな場面で例えながら伝えられる園部さん。
「最終的には、人生は自分と周りの人をどれだけ幸せにするかの勝負です。そうやって発想を転換していってもらえればと思います」とまとめられました。

DSC00008

さらに、講義後の質疑応答で、生徒たちは園部さんから丁寧な回答を受け、“世界にある現実”を身近に感じ取りながら貴重な学びを持ち帰りました。

DSC00024

将来、さまざまなバックグラウンドを持つ人々と、共に生きていくために必要なことを学んだ生徒たち。

「ぼくも玉川学園の授業で研究をしているのですが、新しいものが出てくるたびに置いて行かれるような感覚を持っていました。でも、鈍感力を持って、周りを気にしすぎず、情熱を持って前に進んでいけたらいいなと思いました」。そんな感想を胸に、次へと進む力を受け取りました。

Lecturer Profile
園部 哲史
Tetsusi Sonobe
1984年東京大学卒業。1992年にアメリカのイェール大学で経済学博士号を取得。専門は開発経済学。主に開発途上国における産業発展、汚職、貧困削減の研究に携わり、研究や出版に関する受賞多数。2003年より政策研究大学院大学に所属し、2014年より副学長を務める。